【日記】美容師と元男【鉄壁のビッチ① 】

 

『ヤバくないですか?』

僕は鏡越しの矢嶋さんに話し掛けた。

 

『いや、それが本当なら相当にヤバい事なんだけどさぁ・・・』

 

『にわかに信じられない、ですか?』

『そう、ホントそれだよ』

 

ここは僕の行きつけの美容室。

僕と話しているこの人は

僕のカットを担当してくれてる矢嶋さんだ。

いつも散髪の時に話し相手になってくれる
気さくなお兄さん。
腕も確かだけど、
僕は彼の大らかでノリの良い性格がすごく好きだ。

 

『で、いつからなの?』

 

『つい今朝の話ですよ。』

 

〜僕の回想〜

 

『ダラダラyoutube観ながら、布団で横になってたんです。』

 

『何見てたの?』『youtuberの・・・ってそれ今関係ないです!』

 

『んで、そうしてる内にふと催して、トイレに行ったんですよ。そこで初めて気付いたんです』

 

『アレがない・・・と?』

『そう!!アレがなくて!・・・手前にはアレがあったんですよ!』

『何、アレばっかじゃん(笑)』

 

『いや、だってあんま大きな声で言えないでしょ・・・』

 

僕は自分の胸のあたりを指差し、

小声で言った。

 

『この通り胸があって、その、

男性のシンボル的なやつが無くなってたんですよ!』

 

『ん〜・・・つまりサラちゃんが言いたいのは』

 

『はい、僕、

 

今日から女になっちゃってるんですよ』

 

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『ブフフっ・・・(笑)』
『あ、また笑いましたね!』

そう、僕は女になってしまった。

理由は分からないが
今鏡に映っている自分の姿は
どこをどう見ても女性だ。

一体何がどうなっているんだ。
取り敢えず予約していた美容室に
やって来てみたけれど・・・

 

『いや、笑ってますけど本当ですから!』

『はは、だってさ、

俺が知ってるサラちゃんは

会った時から女の子だったよ?』

 

そうらしいのである。

 

僕の認識と、矢嶋さんの認識とに

乖離がある。

僕が元から女だった?

何が起きてるか分からないけど

何かが起きてしまっている。

 

『いきなり信じろって言われてもねぇ(笑)』

 

 笑う矢嶋さんに、真剣に僕は訴えた。

『でもその証拠に!

僕あれですよ、
今ブラジャーすらつけてませんし!』

『えっ?!』

 

僕の髪をとかす手が止まる矢嶋さん。

 

『・・・何で?』

『何でって!

男の一人暮らしで家にブラジャーあったらおかしいでしょうが!』

 

そう、身体以外の

僕を取り囲む生活環境は

何も変化していなかった。

 

つまり・・・

 

下着とか、服とか、

諸々男物のままだったんだ。

外出する段階で気づいて焦った。

取り敢えず、胸に関してだけは

ネットで調べて応急処置を施した。
(ポイント部分にだけ絆創膏を貼ってきた。)

 

下着くらい

ここに来る途中のコンビニで買えると思ったら
売ってなかったからまた焦った。

コンビニって、

ブラとか売ってないんだ・・・

 

 

『というわけで、今ノーブラなんですよ』

『マジで言ってるのサラちゃん?』

『マジですよ!ヤバくありません?』

 

鏡ごしに、ポカンと口の開いた矢嶋さんの顔。

『ヤバいじゃん、ビッチじゃんサラちゃん』

『いや誰がビッチか!!不可抗力ですって!

 

でも、これで僕のいう事が本当って信じて貰えます?』

『んーー、ノーブラのインパクト強すぎてアレだけど・・・
まあサラちゃんの言うことだから、信じる事にするよ』

 

さすが矢嶋の兄さん!

あなたならそう言ってくれると思ってたよ!

『ありがとうございます!

ちなみに割合で言うと?』

『2割くらいだね』

『それ信じてませんやん!』

 

優しい矢嶋さん相手でこれだから

他の人に言ったら

確実にオカシイ奴認定されるな・・・

 

今から頭が痛い。

 

『ところで、今日はどんな感じにするんだっけ?』

『出来たらこの悪夢から早く覚めて欲しいから

 

夢っぽい髪型でお願いします。』

 

 無茶苦茶なオーダーをする僕。

 

『オッケー!夢っぽくね。』

 

そしてなぜかそれで伝わっちゃう矢嶋さん。

このノリが好きでここに通ってるんだよね。

『サラちゃんの、この後の予定は?』
『取り敢えず、女友達に会ってきます。あいつなら相談に乗ってくれると思うんで』

 

『あー、例の師匠だね。』

『はい』

 

『早いこと、男子の身体に戻れるといいね(笑)』

『やっぱり全然信じてませんよね?』

 

 

『その前にブラ買わないとだね』

『そう、それですよー!・・・あれ?ところで僕って、何カップあるんでしょう?』

 

『いや、俺に訊かれても!

カップ数に対してのスカウター的なやつ持ってないから・・・』

 

そらそうか。

ひとまず、女友達に会う前にユニクロ寄って

簡単な下着を身に付けて行こう、

そんな事を思うサラでした。

 

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ざわざわと、 

戸惑う読者さまを置き去りに

 

続きます。

 

〜第1カット 完〜